紬木たくの瞬きもせず

日本の田舎で、公立高校に通う普通の高校生のいわゆる「恋」の話。舞台は山口県で、背景は山や田んぼ、高校のグラウンドも都会とは違いだだっ広い感じを見ながら、どんどん山口県のイメージが膨らみます。主人公の「かよ子」とその恋の相手「今野君」をはじめ、登場人物は皆山口弁を話すので、読みはまる中、ついつい言葉の真似をしてみたり…「好きなんよ」とか。

特に特別な人間キャラクターがあるわけでもなく、三角関係とか家族に大きな問題抱えていたりとか、特にないなか、とにかく「普通」の女の子が「告白」をされて、初めての恋愛の瞬間を経験していく。携帯電話のない時代、彼からの電話は実家にかかるものであり、たまたま家族が出てしまったりするときの感じとか、デートの帰りに家に送ってもらったら、ちょうどそこに酔っ払ったお父さんが帰ってきちゃって、どうでもいいことなのにとにかく死ぬほど恥ずかしいと思ってしまったりとか。そんな、いわゆる「思春期のそのときにしか実感できない気持ち」が丁寧に書かれていて、まるで自分の日記を読むような気分になります。また、高校入学当時はぱっとしなかった「かよ子」が、今野君とつきあい、3年生になるころには後輩から「あの人素敵ね」と言われるようになっている。その静かな変化がまた、高校時代にはこっそりと各々あることで、とてもいい部分です。

大人になってからふと「瞬きもせず」が気になって検索してみると、そこには、全く表にでなかった作者のエピソードや、実際に山口県のモデルとなったであろう学校なども特集されていました。見たいような、見たくないような、それくらい、「瞬きもせず」は私にとって心の中で大切にしたい漫画です。