犯人が最初から分かっているのに面白い扉は閉ざされたまま

最初から犯人が分かっているのに面白かった小説が「扉は閉ざされたまま」です。大学の同窓会で後輩の新山を事故に見せかけて殺害した伏見亮輔は、現場に入れないよう密室状態を作ります。他のメンバーはなかなか外に出てこない新山を心配し、自殺説まで出てくるのですが、碓氷優佳は何かがおかしいと指摘します。

閉ざされた部屋の前で伏見と碓氷の頭脳戦が幕を開けるといったストーリーです。部屋に入らせないように様々な策を巡らせる伏見ですが、碓氷も負けじと部屋の中に入った方がいい説得力のある説明を行うのです。頭のいい二人の頭脳戦はハラハラドキドキします。

しかも伏見が犯人だとは誰も分かっていないわけですから、不自然じゃないように部屋の中に入らせないようにする必要があるのです。犯人側から描かれる頭脳戦は面白く、バレるかバレないか読んでいるこちらまでドキドキとしたものです。

読んでいて思ったのは犯人のほうが人間味に溢れているということです。探偵役の碓氷は悪人ではないでしょうが、人間味を感じないというか、どこか合理的に動こうとする部分が目立つのです。なんというか新山が心配だから推理しているというよりは、ただ気になったから指摘しているといった感じなのです。

犯人役の視点から描かれているからだと思いますが、登場人物の中で一番不気味で何を考えているのかよく分からないのが碓氷です。犯人側に勝って欲しいと思うことはあまりないのですが、この作品に関して言えば探偵には感情移入できませんでした。