頭脳戦が面白いこの国。

「この国。」は頭脳戦が凄すぎました。キャラの頭が良すぎて、思考回路に追いつかないというか、短編集でありながら、これほどクオリティの高い頭脳戦を書けるのはすごいと思います。

この物語は死刑が認められた一党独裁の架空の国が舞台です。そんな国だからこそ死刑制度に反発する反政府組織が生まれ、そういった反乱分子を食い止めるための治安警察官も存在します。架空の国の設定の説明が分かりやすかったため、戸惑いもなく世界観に没入することができました。

私が好きなのは最初の話で、治安警察官の番匠と反政府組織の戦略家松浦の頭脳戦です。二人の頭の良さに驚愕すること請け合いで、ここから後々まで続く因縁が始まります。私は番匠というキャラが気に入っていて、もっと活躍する姿が見たいと思ったほどです。

またこの二人の戦いだけでなく、架空の国だからこそ起こる事件も見どころです。しっかりとしたミステリーになっており、それぞれの話で主人公になる人物が変わってきます。とはいえすべての話に番匠は登場したため、私は満足です。

いろんな人の視点から見る番匠は微妙に異なり、頭が良いだけでなくどこかに非常さも持ち合わせているキャラだということが段々分かってきます。松浦との因縁以降、反政府組織を捕まえるという執念ゆえに怖い一面も見られました。それは松浦も同様であり、最終話の戦いはお互いが相手を倒すという一心で動いていました。なので一話目よりもバトルは激しいものになっています。これはシリーズものではないためこの一作しかありませんが、設定が面白いゆえになんだかもったいない気がします。